Two secret




  「本当に大丈夫?」
  「あぁ。なんとかうまくやってみるさ」
  「無理は禁物だよ」
  「うっせぇな、ちゃんとやりとげる!!」
 暗闇の中、そんな話し声が暗い部屋の中に響き渡った。

  満月がいつも以上に綺麗な今宵。
  ある美術館にこれも、今宵の満月に劣らぬ
      美しい名画の横には一枚の紙が―――
    『この美しき絵、‘神にひざまづく者’を
        明日頂きに参上する。  ルパン三世 』

 2004年・・・
 ここはフランスの首都・パリ。パリといえば芸術の都で、とても美術館が多いことで有名だ。
また数多くの名画が置いてある。その名画の中に‘神にひざまづく者’という絵が存在する。 この絵の事は、今だに謎が多くいろんな説が出ている。 その美しさゆえにか、神が自らの手で描き上げた、などという空想な説が大半だ。 そんな有名な絵を、今回あの男は盗もうというのだ。

 その絵が飾ってある美術館の前に、カメラが数十台と、たくさんの野次馬が集まっていた。 そんな様子をその美術館の横の古びた家の窓から、一人の男が双眼鏡でその人ごみを見ていた。
  「おーおー。すごい報道人だこと〜」
 その男は、赤い・・・いかにも派手な服を着て、まだ窓の外を見ていた。
 彼の名は『ルパン三世』
 彼の叔父も泥棒をしていた・・・
 そして、そんな彼の側で、煙草を吹かしている者・瞑想をしている者らがいる。
 彼らの名は『次元 大介』『石川 五右エ門』
 彼らは、古くからルパンと仲間的行動を共にしてきている。
しかしながら、二人は今回ルパンの考えている事が今だに分からないでいた。
  
  「あれが、女狐が言う‘フランスの秘宝’って奴なのか?」
 黒い帽子を少し直し、次元は新聞を指差した。 その新聞には堂々と、その絵が大きく掲載されていた。
  「あの絵はただ、謎が多くてなぁ〜。俺的には良い絵だと思ってんだよ・・・そうそう、あれはフランスの秘宝じゃねぇ〜よ」
  「では、何故お主はあの絵に予告状を出したのだ・・・」
 いつもながら、真剣な顔をしながら五右エ門はルパンにそう問いかける。
 すると、ルパンは双眼鏡から目を離した。
  「今日でちょうど、二週間・・・まぁ、今夜。 不二子がここへ来るまで待っててくれ―――」
 ルパンは少し、真面目にそう言うとまた双眼鏡に目をやった。

  今から二週間前の事――――
 ルパン達は仕事ではなく「プライベート」でフランス・パリへと来ていたのだ。
 しかし、その夜部屋に帰ってみると・・・
  「ねぇ、ルパン。フランスの秘宝って興味ない?」
 彼女は、堂々とイスにもたれながら、帰ってきたばかりのルパンへそう問いかけた。
 彼女の名は『峰 不二子』
 彼女も、いちおはルパンの仲間なのだが・・・
 時と場合によっては裏切られてしまう事もある。
 そんな彼女の事を、ルパン以外の二人は‘女狐’などと呼び、あまり好かれていない。

  「おい、不二子。何で、お前がここにいるんだ」
 次元は、不愉快そうにそういった。
 すると不二子は、皮肉にも笑いながらルパンへもう一度問いかけた。
  「ねぇ。フランスの秘宝に、興味ないの?」
  「おい。人の話を聞け!!!」
 次元は、不二子へそう言う。
 しかし、不二子はすました顔でルパンの言葉を待った。 今回も、仕事を提供してきているようだが、彼女の仕事を引き受けるとろくな事はないのは十分承知 である。しかし、ルパンは興味津々な顔つきで不二子に喋りかけた。
  「フランスの秘宝?!」
  「そう。この国の中央にそびえる建物の中にあるの」
 どう?っと言いたそうな顔をして不二子は窓を背にイスに足を組んで座っている。 その様子を不二子の後ろで壁にもたれながら煙草を吸っていた次元が口を開いた。
  「おい、やめとけルパン。また、こいつの事だ何か企んでやがんだぜ!」
  「全くだ・・・」
 五右エ門も、次元の意見に賛成したかのように、 窓の下であぐらをかいて目をつぶったままそう言った。
 しかし... 
  「―――良いぜ、不二子。その仕事引き受けた!!」
 ルパンは、相棒二人の意見などそっちのけで目の前に座っている不二子にそう言った。
 その後ろでは、こりねぇ奴だ・・・と相棒二人は呟いた。

  「――ところで、何故きさまが秘宝の話を知っている」
 五右エ門は目を薄ら明けてそう言った。
 すると、不二子はその問いにあっさりと答えた。
  「それは、私が今から十年前にその建物の中で働いてた事があるからよ」
 そう、不二子が言うには今から十年前の事...
 不二子は、フランスへ来て訳あってその建物の中にある喫茶店で働いていた頃。 ある日、彼女はその建物の中で道に迷ってしまったそうだ。 まぁ、これは後から聞いた話らしいのだが、その建物にはいたるところに仕掛けがしてあるらしい。 そして、その迷っていた時に大きな扉の前にたどり着いたのだという。 その扉の前には警備員が二人おり、その扉が少し開いていたので見るとダイヤモンドのように光り輝く ものがあったそうだ。そのあと、警備の人が彼女を送っていく際に『もうあそこへは来るな』 と警告したそうだ―――

  「・・・それにしても、よくお前がのこのこお宝見捨ててこれたなぁ」
 次元は不二子にいつものように嫌味ったらしく言った。
  「あら?私、その頃まだルパンとも逢ってないもの〜」
 不二子も、負けじと次元へもっと嫌味ったらしく言う。 
     「ほぉ。いつも俺らを走りまわして、自分は色気で物を頂くのによ―」
  「そうかしら?それに、私その頃はまだ子供だったもの」
  「ま、あれだな。昔と変ってない所は欲女ってとこだけか」
 次元はトドメと言わんばかりにそう言った。
  「・・・次元、一つ忘れてている事があるわ」
 不二子はいつものように余裕ぶって後ろにいる次元へ言った。
 次元は煙草を吸いながら不二子へ答えた。
  「忘れてる事なんてないな」
  「まったく・・・私には今も昔も“綺麗”って言葉がつくの。そうは思わない、ルパン?」
  「十年前かぁ・・・どんな顔だったのかなぁ〜」
 ルパンは不二子の問いには答えづに、不二子の十年前を想像していた。

 すると―――
  「・・・お主ら、やる気はあるのか」
 五右エ門は先ほどまでの話を目をつぶって聞いていたらしい。
少し、切れ気味だった...
  「ごめんなさい。話がそれたけれど、そのお宝を盗んでほしいの」
 できる?という感じで不二子はルパンに問いかけた。
ルパンは、右手をあごに当て、少し自分の足元を見て何やら考え込んでいた。
  「・・・で、その建物の構造は?」
 ルパンは、まだ下を向いたまま不二子にそう問いかけた。
 すると、不二子は目の合わないルパンを見ながら少し微笑み答える。
  「そのことだけど、いちおそこの喫茶店で働いてみるわ・・・明日から」
  「おい、そんな手間のかかる事より、その建物作った野郎にきゃー良い話だろう!!」
  「全くだ・・・不二子には、その建物の警備事情をさぐってもらってはどうだ?ルパン」
 次元や五右エ門は、ルパンへそう問いかけた。
そんな二人の意見を聞いてなのか、ルパンはようやく不二子に目をやり、口を開いた。
  「そんじゃ、こうするか・・・まず、不二子には明日からその喫茶店で働いてもらって、 警備の状況を調べてもらう。そんで、俺らは、その建物作った奴を見つけて建物の構造を 把握する。結構は、二週間後・・・これで良いか?」
 ルパンは、不二子や相棒にもそう問いかけた。
  「そうだな・・・」
  「承知した」
  「分かった。一週間後に一度連絡するわ―――」
 不二子は、そう言うなりルパンの座っているイスの横を通り、ドアの方向へ歩いていった。
その行動を見てか、ルパンも不二子の後を追うようにドアの方へと歩み寄った。

  「・・・今夜はもう暗い、俺の部屋に泊って行きな」
 ルパンは、そっと不二子の右肩を抱いた。
  「おあいにく様・・・先約があるの、じゃぁね」
 不二子は、右手をドアのぶにやり、左手でルパンの手を思いっきりはらい、ルパン達の部屋を後にした。
 そのやり取りを後ろから見ていた、相棒二人は、いつもながらルパンをあきれながら見た。
そして、少し落ち込んでいるように見える、ルパンが不二子が出ていったドアを閉めると、
二人はルパンを見て――― 
  「ふっ。ふられたな」
  「こりねぇーヤツ・・・」
 と、口をそろえて言うのである。
 それは、いつものルパンでも応えたのだろう・・・
  「ぅ、うるせ〜!明日、その建てもん作った野郎の所行くからそいつんこと調べといて―――」
 ルパンは、そう言うなり、乱暴に自室へ戻っていった。
  
 そして、翌日・・・
 ルパン達は、遅いながらも朝ご飯を食べようとしていた。
 もちろん、作るのは次元ただ一人である。
 今日の朝ご飯は、サンドイッチにご丁寧にサラダも作っているようだ。
今日も、気合いを入れて次元は黒のエプロンでキッチンに立っている。
 その頃、残りの二人...
 ルパンは、片手に次元が入れてくれたコーヒーを持ち、ノートパソコンで何かを打ち込んでいる ようだ。そう、昨日ルパンは二人にあんな言い方をしたものの自分も気になり、少しパソコンで探し 出していたのだ。
 そしてもう一人、五右エ門はイスの上で目をつぶったままあぐらをかいている。
また、ふっと彼の前の机の上を見ると、レトルトのご飯と味噌汁がまだ作られていない状態で置いて あった。
 いったいどこで購入したのだろう・・・
 まぁ、そういっているうちに次元は、二人分のサンドイッチを手にしてキッチンから出てきて、 机の上にそれを置くと、座る間もなく、五右エ門のレトルト食品を手に、またキッチンへ戻っていった。 次元はなれた手つきで、そのレトルト食品を作っている。
 そして、それを五右エ門の机の前に置き、やっとのことで次元はイスへ腰を下ろした。
  「・・・そいじゃ、飯でも食いながら建物の話でもするか」
 ルパンは、フォークを片手にそう言った。 しかしながら、次元はひじをつきルパンを何も喋らずに見た。
  「どうかしたか?」
 ルパンは、その視線に気付き、次元を見るのであった。
  「いや・・・別に」
次元は、少しすねているようにも思える。
  「なぁ〜に?次元ちゃん・・・すねちゃってるの?」
 ルパンは、次元をおちょくるようにそう言った。
 すると、次元はいきなり立ち上がり、自室へと入っていった。
  「怒らしたのではないか?」
 五右エ門は、目を開けてルパンに呟いた。
  「あんなことで怒ってるわきゃねーよ・・・」
 ルパンは、右の手をひらひらさせながらそう言った。
 そして、ルパンはまたパソコンに向かった。
 次元が、自室へ入ってから少し時間が経ち、その間に二人は、次元の手料理を口にしていた。
  「おい。やはり、次元は怒っているのではないのか?」
 五右エ門は、懐から出したじさんの箸を置いた。 ルパンは、少しその言葉を気にしたのか、次元の部屋の前までやってきた・・・
  「おい、次元――――」
  キィィ――
 ルパンは次元の部屋のドアを開けた。
 すると、部屋の中はぐちゃぐちゃになっている。
  「おお、ルパン良いとこに来た。そこの紙とって部屋出てくれ・・・」
 次元は、少しも機嫌が悪いようには見えなかった。
 
  数分後...
  「それじゃ、女狐が言ってた建物の事だが―――」
 次元は、紙を取出してそう話を切り出した。
 何でも、次元の話によれば・・・
 その建物の名は“ゴールドフリーハウス”っと言ういかにも財宝が有りそうな名前で、 その建物を作り上げた男の名は“ドッブ・クリーン”というらしい。
しかしながら、その男すごく昔の事なので生きているはずもなく・・・その建物の設計図は全て、 ひ孫であるアン・クリーンの手にあるというのである。そのことを知った、 次元はそのひ孫に電話をしたそうだ。 もちろん、青年を装って・・・  すると、ひ孫は心から自分の家へ招待したのだという。
 ひ孫が住んでいるのは、フランスのはじ・ハーグだった。

  「大丈夫か?ルパン」
 次元の話を聞くやいなや、ルパン達はフランスのはじ・ハーグへおもむいたのだった。
  「大丈夫、心配すんなって・・・」
 ルパンはいたって平然としていった。
  ブゥ―――――
 ルパンは青年に変そうをし、家のブザーを鳴らした。
  「はい」 
 ドアを開けたのは、アン・クリーンその人だった。
 そして、ルパンは自分がさっき電話したものだというと、アンという、青年は少し嬉しそうな顔をした。 何でも、祖父が作ったものは評判が悪く、自分までいじめられる始末なのだという。 だから、彼にとって今、目の前にいるルパンが扮した青年をとても、素直に喜んでいた。 そして、問題の設計図を見せてもらうと、何とまぁ・・・子供じみた、仕掛けばかりがその設計図に書き記されていた。
 その中には、ルパン達が泊っている部屋のすぐ横にそびえ立つ美術館のものもあった。 それを、ルパンはアンがいない間に手早く写真におさめた。
 その作業を終えた頃、ルパンはこれから用事があるからと言って、その場を後にした。 少年・アンは、少し淋しそうに『また来てくれよ』とルパンに言った。 
 ルパンは、少し会釈をして去っていた。

 「・・・あぁ〜しんど」
 ルパンは、少年の家を出た後その家の近くに止まっていた、次元の運転する車へと乗った。
 「どうだ?ルパン・・・」
 「ばっちりよ」
 ルパンは、助手席に乗ってそう呟いた。

 その頃、昨夜帰った不二子も、その建物の中で、警備会社の方々の話を立ち聞きしていた。
 「マスターこの建物って、何でできてるんですか?」
 「あぁ、この建物はコンクリートで頑丈にできてるんだ」
 どうかしたのか?というニュアンスでマスターは不二子の問いに答えた。
 
 そして、一週間どう行動するか悩み悩んで、役割を決めはじめた頃、 不二子から、中間報告があった。
 「もしもし?ルパン、建物の中の事は分かったわ」
 「こっちも、大体の計画は立てたぜ・・・」
 不二子からの電話の反論をルパンは軽々と答えた。
 「そう。あとは、その警備会社の事を調べて見るわ」
 「おう、頼んだ」
 「それじゃぁね・・・」
 不二子は、ルパンへの電話を切った。

 そして、月日は流れ現在・二週間が経過しているのだ。
 その夜...
 「どうして、あの絵を盗もうなんて予告出しちゃったの!!」 
 不二子は、ルパンの部屋へ来てそう怒鳴った。
 「なんだよ〜いきなり・・・」
 ルパンは方耳を押さえて平然としてそう言った。
 「どうして、平然としていられるの?!この状態で!!!」
 銭形だってきてたのよ!!と後にそう言った。
 「まぁ〜俺に考えがあんだ、任せとけって!」
 ルパンは、不二子にウインクをして見せた。
 
 そして、当日。
 ルパン達は、昼間に美術館を訪れた。
もちろん、変装をして・・・(しかし、不二子はその場にはいなかった)
 「今日こそは、この銭形が、ルパンを捕まえてやるからなぁ!!!」
 っと、大はりきりでその絵の周りの警官に混じっていた。
 「こりねぇなぁ〜とっつぁんも・・・」
 ルパンは笑いをこらえながら銭形を見た。
また、いろいろな美術品を見学している中、ついに予告の時間が来た。
 バン!!
 さまざまな美術品を引き立たせている電気という電気すべてが、消えたのだ・・・ もちろん、これもルパンの計算のうちだ。
 「くっ・・・これじゃぁ、前が見えんぞ!!」
 銭形は目を細め、辺りをうかがおうとした。 しかし、辺り一面は暗闇とかし、そして赤外線センサーもこれでは役に立たないのだった。
 「楽勝よ!!」
 ルパンは笑いながら、名画である『神にひざまづく者』をなんなく奪い、入ってきた入り口から、 堂々と持ち去ったのである。そして、ルパン達が去った後、予備電気が作動した。 その時間およそ1,5秒。
 明かりがついてからそう時間はたっていないが、まだ目が慣れていないのか、銭形は細い目をして 辺りを見ていたが、目が次第に見えてきたのか、いきなり叫びだした。
 「・・・ルパ〜ン!!」
 そう。銭形が見張っていたのは、ルパンがカラーコピーをしてがくに貼っていた‘神にひざまづく者’だったのだ。 そう、本物の絵は昨夜ルパン達が、防犯センサーを難なくクリアーし、奪い取ったのだ。
 そのことを知らない、銭形警部はいつもの様に手錠を振り回し、イラついていた。

  その頃、ルパン達は...
 「ひっひひひ・・・あの銭形の顔!今まで以上に爆笑もんだぜ!!」
 ルパンは、青い作業服に着替え大トラックを運転して、何やら携帯電話をかけているようだ・・・
 「ブルルルゥ・・・ガチャ」
 「不二子?そっちの状況はどうだ?!」
 「ぇ―――え、異常はないわ」
 電話の相手は、不二子のようだ。 しかし、どうも様子がおかしい・・・声が、少し震えているようにも思えた。
 「どうかしたのか?不二子・・・」
 「別に・・・」
 「それじゃ、計画通り行くから!」
 「わかったわ...」
 そういうなり、不二子は自分から携帯の電源を切った。 ルパンは、不可解に思いつつも、国の中心にそびえる“ゴールドフリーハウス”へと車を走らせるのだった。

 数分後...
 「準備は良いか?!」
 ルパン達は車から降り、不二子が待つ喫茶店へと向かった。 しかし、時間が夜の11時を過ぎていたため、計画では不二子が表のドアを開ける役目だったはずなのだが・・・.
 「おい、ルパン・・・ドアがしまっているぜ」
 「ア〜レ?計画では、不二子ちゃんが開けてくれるはずだぜ?」
 「どうするのだ?」
 「しゃぁねぇ・・・裏口行って来るわ」
 ルパンは、頭の帽子を脱ぎ頭をかいてそう言った。 そして、ルパンは相棒二人を残して、裏口へと回る。 そこは、細い路地で、『関係者以外立ち入り禁止』とありきたりな看板と目の前にはドアがあった。 そのドアノブをひねり、中へ入っていくと、なにやら話し声が聞こえる。
 「マスター・・・このテーブル買い変えません?」
 「この店は、このままでいいんだよ・・・」
 「でも...」
 話し声の主は、不二子とここのマスターだったようだ。 
「すいません・・・」
 ルパンは、声を少し変え二人の前に現れた。
 すると、マスターらしきひげを生やした男が――
 「はい・・・どなたですかな?」
「テーブル等を運びに来ました、配達屋です」
 「配達屋?!」
 マスターは、左目を細くして配達屋の格好をしたルパンを睨む。
 「それは確かに、私の店が頼んだのか?」
 「はい、確かです。それがなにか・・・?」
 ルパンも負けじとマスター少し睨んでそういった。
 すると、側で見ていた不二子は思いつめたように顔でマスターに話しかけた。 もちろん、演技だとは言うまでもない。
 「・・・マスター。私が頼んだんです」
 「何故だ?先ぼど言ったばかりではないか・・・」
 マスターは、ルパンから目を外す。 そして少し複雑そうな顔をして不二子にそう言った。
 「確かに、勝手に家具を持ってきてもらったことは、申し訳なかったと思っています。  でも、この店をもっとよくしようと・・・」
 「しかし―――」
 「一度だけ・・・一度だけでいいんです。家具を入れて、考えては頂けないでしょうか」
 不二子は、マスターにそう申し出た。
すると、マスターは不二子の熱意に負けたのかなんなのか、分からないが・・・
 「わかった。表のドアを開けてこよう」
 「あ、ありがとうございます」
 不二子は、マスターにお辞儀をした。 しかしマスターは、その行動にも見向きもせず、表のドアへと向かった。 すると、側でその状況を見ていたルパンが、口を開き、小声で話しかけた。
 「おい。不二子」
 「何、ルパン?」
 「さっき電話した時、何かあったのか?」
 「電話でも言ったように、何もないわ」
 「けどよ...」
 ルパンは、不二子を心配そうに見ている。
 「それより、早くマスターの後付いて行かなくても良いの?」
 不二子は、ルパンにそう言う。
 「あ〜。また、後できっちり話するからな」
 ルパンは慌てて不二子に右人差し指を指しながら、そう言い、小走りでマスターの所まで行く。
 「“何もない”って言ってるのに・・・」
 不二子は、そんなルパンに呆れているようだった。

 「それじゃ、テーブルとイスを一つづつ頼めるか・・・」
 「はい。わかりました」
 マスターは、表のドアを開けルパンにそう言い残し、店の中へと入って行った。
 「さて、お仕事でもしますか・・・」
 ルパンは、トラックの運転席のドアを開け、相棒二人に声をかけた。
 「出番だよ〜お二人さん。計画通りに頼むぜ!」
 「わかってるよ」
 「うむ。承知した・・・」
 次元.五右ェ門が返事をし、ドアを出た。

 「マスター・・・すいません。勝手なことをして」
 不二子は、マスターにそういった。 しかし、マスターは何か考えているかのように、店に戻ってくるなり、近くのイスに腰をかけ、足を組みながら下を向く。
 (どう出る。ルパン・・・貴方なら、この秘宝どのように盗み出す―――)
 マスターは、不快な笑みを下を向きながら、浮かべる。 その様子を見た不二子は、不信に思った。
 そこに、
 「あの〜これはどこに置けばいいすか?」
 ルパン・次元・五右ェ門は、店に荷物を持ってきてイスに座っている、マスターにそう問う。
 「あぁ、ここで結構・・・」
 マスターは作業員の格好をした三人に指示をして、また考え込んでしまった。 その間にルパンは、不二子にウインクをした。 その合図を見た不二子は、少しため息をしそうな顔をして、ルパンを見ようとしたが・・・ ルパンは、次の作戦へと移っていたので、この場にはいなかった。
 「・・・マスター。どう思われますか?」
 「何をだね?」
 マスターは、不二子の問いにようやく顔を上げた。
しかし、不二子の不信感はつのるばかりだった。
 「この家具のことです」
 「良いかい。この店の歴史は、君が思っているほど浅くはないのだよ・・・」
 と、マスターは不二子にこの店の歴史を話し始めた。
 そのすきに、ルパン達は奥の部屋へと入っていく・・・
 「いいか。ここからは失敗は許されねぇ」
 「いつものこったろ」
 「うむ・・・」
 ルパンと次元は、配達屋の服の上から警備服を着る。
 「なんかよ〜ゴワゴワしねぇ?」
 「お前が考えたんだから、文句言うなよ!!」
 ルパンのぐちも、次元にかかれば小さなたわ言となった。
 その時、五右ェ門は奥へとつながるドアの前で瞑想を始めた。 服装は、もちろん配達屋の服だ。
 「ほんじゃ、五右ェ門。本物の警備員がこのドアから出てきたら、入ってきてくれよ。  これ、仕掛けの地図な」
 「うむ・・・承知」
 ルパンは、五右ェ門に仕掛けの地図を渡し、次元と共にドアの中へと入って行った。

 「結構思ってたより、暗いのね〜」
 ルパンは、ドアが閉まった後にそういうと、左についている時計のボタンをポッチと押す。 すると、時計の上にはスリーディの地図が浮かび上がり、電気がつく。それを見た、次元が呟く。
 「こりゃ、また便利なことで・・・」
 「時代は、さらに進化してるんだよ。次元ちゃん」
 ルパンは、得意げにそう言う。 そして、ルパンは時計の地図を見ながら、仕掛けである“落とし穴・隠し扉”などをクリアーする。 そして、ようやく不二子が言っていた例の扉の前へとたどりついた。

 「・・・?まだ、交代の時間ではないが」
 「今日は、早めにと言われましたので」
 「そうだったのか・・・後は頼んだぞ」
 「「はっ!!」」
 警備員は、ルパンの嘘を信じてその場を立ち去った。
 「案外、簡単だったねぇ」
 「ま、オレらにとっては好都合じゃねぇか。早いとこ済ましちまおうぜ」
 「そうだな・・・」
 ルパンは、扉を開けた。 そこには、不二子が言っていた通り、山ほど輝くものがあった。 そこで、ルパンは―――
 ザバーンッ!!
 その宝の中へダイビングをはかった。
 「おい、ルパン!遊んでねぇでさっさと仕事しろ!!」
 「へぇ〜い」
 ルパンは次元にそう言われ、少しブスッとふてくされたような顔をしながら、お宝を一つ一つ見ていった。 すると、一つの古い地図を見つけた。
 「おい、次元見てみろよ・・・」
 「あぁ?どうかしたのか」
 「この地図、結構古そうじゃねぇ?」
 「確かに・・・言われてみればそうだな」
 「こんなお宝よりもっと、馬鹿でかいもんがあんじゃねぇの?」
 ルパンは笑みを浮かべ、そういった。
 キィィ――
 ルパンが、話し終わると同時に五右ェ門が入ってきた。
 「五右ェ門〜丁度良いところに来た。これと、これ〜持って扉の前に置いといてくんない?」
 ルパンはついさっき入ってきたばかりの五右ェ門にそう言う。
 五右ェ門は少し、ムッとしていたようだがルパンのお宝を持って扉を出て行き、また戻ってくるなり、 部屋のお宝をジッと見回している。
 と、一つの刀が目に入ったのかその刀の近くへ行き、手にっとって見る。
 「・・・これは?」
 「ん?どうした。五右ェ門・・・・・・」
 ルパンも五右ェ門と同じように、刀の近くによる。
 「これは、名刀中の名刀・・・“ムラサメ”!」
 「へぇ〜これがあの有名な・・・」
 五右ェ門は、刀を鞘から抜き取り、少し薄暗い部屋の光にはさきを向ける。
 何故、フランスにあるのかは別として、さすが名刀なだけあって雰囲気が緊迫している。
 五右ェ門は刀を見ながら、ルパンにそう説明すると、子供が新しいおもちゃを見つけたような顔つきで、 刀をマジマジ見ていた。
 すると、ルパンは・・・
 「五右ェ門。持って帰っちまえば?」
 「しかし・・・」
 五右ェ門は、少し戸惑ったように自分の手の中にある“ムラサメ”を見る。
 「良いんじゃねぇ〜の?オレ達は‘泥棒’なんだからよ〜」
 ルパンは笑いながら、そう言うと五右ェ門は目をつむり、刀をギュッと握った。
 「かたじけない・・・」
 五右ェ門は沿う小さな声で呟くと、表へ出てルパン達が今入っている扉の前で座り、瞑想を始めた。
 その様子を、片隅で見ていた次元はルパンへ声を掛けた。
 「おい、ルパン。もう不二子のヤツは限界なんじゃねぇのか・・・」
 「不二子!!・・・すっかり忘れてたぜ――」
 ルパンは手をパンッと叩き、宝の山をあさり始めた。
 「ル、ルパン!?」
 「あった〜こんなもんで不二子ちゃんのは良いよな?」
 ルパンは、宝の山の中から一つのネックレスを取り出す。
 そのネックレスには、ダイヤ・ルビー・サファイヤが散りばめたとても高価なものだった。
 「別に、何でも良いんじゃねぇの〜」
 あの女狐だからな・・・とつけたしって次元は、ナゲヤリにルパンを見て言った
。  相変わらずとでも言おうか、なんと言おうか、次元の‘不二子嫌い’は相当なものだ。 っとルパンは改めて悟り、フッと溜め息を一つついた。
 「ほんじゃま、不二子ちゃんの所に戻りますか・・・」
 ルパンはそう言うと、ポケットから頑丈にできた白い袋を出して、選んだお宝をその袋にドサッと 入れた。その後、ルパン達は袋を肩からかけて“落とし穴・隠し扉”などの仕掛けを行きしよりもなん なく、くぐり抜け、喫茶店の裏へと戻ってきた。
 ルパンと次元は、警備員の服装を脱ぎ捨て、テーブルとイスか入っていたダンボールの中へと投げ入れた。

 「――という事なのだよ。だから、君の気持ちは嬉しいが、この店は代々このテーブルとイスで仕事  をさせてくれているんだ。でも、もし私の代で変えてしまったら、私自身名残惜しんでしまうからなのだよ・・・」
 貧乏性かな・・・と笑いながら、マスターはそう不二子に言う。
 「わかりました。申し訳ありませんでした、こんなこと勝手にしてしまって・・・」
 「良いんだよ。君が、この店を思っての行動なんだとうい事は十分わかっているから――」
 マスターは、不二子の肩をポンッと叩いて、配達屋の姿を探している。
 「配達屋は、どこに行ったんだ?」
 「え?・・・」
 不二子は、少しあせったように辺りを見回すと、店の奥で、喋っているルパンを見つける。
 「いましたよ、マスター」
 「どこかね?」
 「店の奥ですよ・・・」
 「あぁ・・・君達。悪いんだが、このテーブルとイスを持って帰ってはくれなうかね?」
 マスターは、奥で喋っていたルパン達にそう言う。
 「はぁ・・・返品ってことですかい?」
 ルパンは、左目を細めてマスターへそう聞く。少し、機嫌が悪そうにも見えた。
 「そういうことになるか・・・」
 マスターはルパンの顔を見ながらそう言い、溜め息をつきながら懐からドル札を三枚出した。
 「これで、返品代はたりると思うんだが・・・」
 「毎度、またごひいきに・・・」
 ルパンは、マスターからお金をもらうと次元や五右ェ門に指示を出し、テーブルとイスを奪い取った お宝が入っているダンボールの中へと入れる。すると、テーブルやイスはみるみるうちに小さくなっていく。 つまり、テーブルやイスはただのゴムでできた偽者だった。そんな事にも気付かずに、マスターは店を 出て行くルパン達を見送った。

 「マスター、今夜は遅いので帰っても良いでしょうか?」
 不二子は、ルパン達が去ってからすぐにそう言った。
 「あぁ。今夜はすまなかったな・・・」
 「いえ、私こそ・・・」
 マスターも、不二子も下を向き何かを考えているようだった。
 さきに、その沈黙をといたのは不二子だった。
 「そろそろ・・・」 
 「あぁ、いろいろすまなかったね・・・」
 「いえ。それじゃぁ、お疲れ様でした」
 不二子は、店の制服であるエプロンを古びたテーブルの上に無造作に置き店を後にした。その姿を、 何も言わずにマスターは、見ていた。




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