坂道




「不〜二子ちゃ〜ん!」
走り去っていくFIATに向かって叫ぶルパン。
「だから、あんな女とは手を切れって言っただろうが!このマゾ男!」
「そうだろうが!」
「後方から銭形の声がするぞ。」
五右ェ門がボソリと言う。
「うるさい!」
「今、それどころじゃないんだよ!」
「逃げぬでよいのか?」
その言葉で正気にかえる二人。
「逃げるぞ!」
「どうやって…?」
その時、彼らの目に映ったのは一台の自転車。
はっきり言って、不法駐輪である。
「乗るぞ。」
「三人、乗れねぇよ!」
「こうすればいい。」
前かごの側面をあっさり斬り取る五右ェ門。
そこに平然とあぐらをかく。
「じゃ、オレ後ろね。次元ちゃん、運転よろしく!」
「ったく、仕方ねぇな。って、前見えねぇよ!」
「次元、右だ。」
「なら、刀どけろよ。ぶつかるだろうが。」
そういいながら、ハンドルを右に切る。
ガガガガガガ…
「次元ちゃん、何の音?」 「へ?五右ェ門、刀すってる!」
「ならば、どうしろと?」
「自分で考えろ!自転車、止まるだろうが!」
「左だ。」
「人の話をちったぁ聞け!」
後ろに立ち、次元の肩に手を置いてのぞき込むような形でルパンが言う。
「まぁまぁ、痴話喧嘩はやめにして。」
言った本人は冗談のつもりだったのだが、言った相手が悪かった。
「お主…斬るぞ。」
ルパンにクレームをつけようとしていた次元が慌てて止めに入る。
「自転車で抜刀すんじゃねぇ!大体、この状況だと俺が危ねぇだろが!」
「右だ。気にするな。殺しはせん。」
「あのなぁ…」
「下り坂だ。」
「へ?うわああああ…!」
前の見えない下り坂。
ジェットコースターで目隠しをされた上に固定装置を全くつけていないような気分である。
まぁ、こちらは死ぬ事は無いかも知れないが。
「えらく、急だね〜。」
その傾斜、約60度といった所か。
ご存知かも知れないが、これぐらい急になるとマウンテンバイクならともかく、普通の自転車では、ブレーキは全く意味をなさない。
勢いは消えず、根性で曲がるなりしなければいけない。
「お前さん、楽しそうだな。」
「そりゃ〜、信頼してますから〜。」
「落ちろ!」
「や〜なこった。」
「次元、左だ。」
そう、冷静に告げられ…
「できる…かっ!」
必死でハンドルを切る次元。
キ―ッ!
「何とか成功したな。」
目の前には道が見えている。…道?
「五右ェ門?」
後ろを向くとルパンもいない。
「どういう事だ?」
と、後ろから二人が歩いてきた。 「次元ちゃん、曲がれたんだ?」
「お、お前ら飛び降りたな…?」
「無論。」
「そーゆー事。」
ルパンに詰め寄る次元。
「信頼してるとか、ぬかしやがったのはどこのどいつだ?」
「ここのこいつ。」
「お前〜。」
「いや〜、軽い方が曲がりやすいかな〜とか思って。」
「遠心力がかかるからな。」
もっともらしい事を言う二人。
「ほぉ〜。つまり、俺の事を考えて飛び降りたと、そう言いたい訳だな?」
「うん。」
信じられるか!
わめく次元。二人は耳を押さえている。
「とりあえず、落ちついて。ねっ。」
「誰のせいだと…。」
「ルパーン!待て〜!」
遥か後ろから声が聞こえる。
「近所迷惑だな。あれは。」
「五右ェ門、冷静にコメントしてる場合じゃないと思うよ?」
「おい、あれ、FIATじゃないか?」
見るからに黄色い車から手を振ってる女が一人。
「天の助け!不〜二子ちゃ〜ん!」
「といっても不二子がいなければ、最初からこんな目にあってなかったのではないか?」
「どうせ言ったって、聞いてやしねぇよ。」



哀れ、次元。すまん
ジゲスキーの方々、すいません〜。


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