Secret in the
Moon 北欧に位置する小さな国の、街外れの小さな一軒家。 「気に喰わねぇな」 不二子の話の途中だったが、次元の放った言葉に場の空気が一瞬固まった。 「そんな大した事ねぇ獲物、よくまあ気に入ったもんだ」 はっきりと言われて不二子はむっとしたような表情で次元を見、ルパンは あーあ言っちゃった というように軽く額を押さえる。 どうやら今回の獲物は完全に不二子個人のシュミ。随分前にどこぞの美術館から盗まれて行方不明になっていた黄金細工の箱らしい。 古いものではあるが、その細工は現在でもなかなか作れるものじゃないらしく、それなりに価値はあるだろう。 しかしそれでも、とりたてて価値があるわけではないと思われるものだった。見たところ、ルパンもそれほど乗り気じゃなさそうだ。 それに引き換えこっちは久々に自分好みの獲物。そしてなにより、ルパンだってかなり気に入っていたはずだ。 ルパンが純粋に獲物だけを比べれば自分の持ってきた仕事を選ぶだろう、だが、なにしろ相手が相手。不二子が持ってきた話をルパンがあっさり蹴るとは思えない。 大した物ではなくても、愛しの不二子ちゃんのためなら〜♪なんて言って引き受けてしまうのが大抵だ。 しかし、今回ばかりはみすみす別の獲物に乗り換えられては堪らない。 「ルパンは俺と先約があるんだ。どれだけ気に入ってるんだか知らねぇが、それが終わってからにしてもらおうか」 「あら、アタシは別にアナタに手伝って欲しいなんて思ってないわ。ルパンさえ乗ってくれればいいの」 次元の言い分をさらりと流し、ねえルパン? と、不二子はちらりとルパンのほうを見遣った。 が、当のルパンは次元と不二子の板挟みになるのを察してか、さりげなく目線を合わせないように顔を背けている。最近だらけていたせいか、険悪な二人の様子を見ているうちにやる気が失せてしまったのかもしれない。 なにせ気分ひとつでシゴトのするしないを決めてしまうルパンだ、ましてや今回は予告状も出していなければ計画だって完全には上がっていない状況で。 次元は焦った。今ルパンにやる気をなくされては何の意味もない。折角の獲物だというのに。 「とにかく今回は諦めるか後にするかにしな不二子。俺たちの仕事の邪魔だ」 「イヤよ。アナタに言われる筋合いはないでしょ!」 「ふざけるなよ!その程度の獲物で後から来て、あつかましいじゃんねぇのか!?」 「そっちこそ、お酒なんて形に残らないものじゃないの!くだらないわよ!」 「ンだとォ!!?」 火花を散らしそうな勢いで、次元と不二子は同時にガタン!と立ち上がった。 これには流石にびっくりしたのか、ルパンもぎょっと目を丸くして二人を見上げる。 「おいおい、二人とも落ち着けってぇ。ちょっとオレの話を―――」 「「ルパンは黙ってて!」「お前は黙ってろ!」」 ケンカの勢いそのままに同時に怒鳴られて、そのあまりの剣幕にルパンは思わずびくりと身を引いた。 (…ったく こいつらはぁ―――) 盗みに行くはずの当人そっちのけで睨みあう二人に、ルパンはやれやれというように肩をすくめた。 |
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